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【京友禅×イラストレーター太郎丸氏】歴史の中に息づくもの

Illustration | 2022.08.04

Text by Hinata official

  • Feature
  • Interview
  • KYO"NEXT"YUZEN

120年以上の歴史をもつ「株式会社関谷染色」の保有する京友禅の草稿をNFT化し、伝統工芸を後世に保存・継承していくとともに、多様なコラボレーションを通して新たな発展を目指す『KYO”NEXT”YUZEN』プロジェクト。

その取組みの一環として、デジタルイラストとのコラボ作品をイラストレーターの太郎丸氏に制作していただきました。

草稿の美しさに目を引かれる

―― よろしくお願いします。まずはご自身のことをお伺いしてもよろしいですか?

【太郎丸】
フリーのイラストレーター兼ゲームシナリオライターの太郎丸コトノハと申します。
主にプレイバイウェブ(PBW)というゲーム業界で活動させていただいています。

―― 「HINATA」でイラストを販売することになったきっかけは?

【太郎丸】
Twitterで「HINATA」さんの京友禅の作品紹介ツイートを見かけまして、そのときは「これが素材として使えるんだなぁ、すごいなぁ」と思っていたんですが、その後、2.5次元イラストレーターさんの紹介記事で実際にイラストに使われているのを見て、自分も使ってみたいなと感じ、「HINATA」さんにご連絡させていただきました。

万人共通でいて千差万別、様々な顔をもつ”鬼”という存在

太郎丸氏の作品『鬼仙郷見聞録-導き手を名乗る少女-』

―― 今回出品されたのは可愛らしい鬼の女の子のイラストでしたが、なにか理由があればお聞かせください。

【太郎丸】
そうですね。 色んな人に興味を持ってもらいやすい、わかりやすい題材として、昔話で馴染み深い「鬼」という存在をモチーフにしました。
そもそも和風ファンタジーが好きというのも大きいのですが。

―― 確かに、日本人なら誰でも鬼に対する共通イメージはありますよね。

【太郎丸】
日本を語る上での記号としても、わかりやすいですよね。

それに鬼って面白いんですよ。
一番普遍的なイメージは、悪者としての鬼、畏怖や恐れの象徴としての鬼かなと思いますが、調べてみると例えば日本人とは外見が違う異人さんのことが鬼として伝わったり、天才的な能力を持つ人間を鬼と呼んだり……。あとは昔話だと、人間の汚さの対比として、心優しい鬼が登場することもあります。

万人共通なようで、実は千差万別なイメージを内包している、ドラマチックな存在が「鬼」なんです。

―― なるほど、ファンタジーから実際にあった事象まで、いろんな事柄の代名詞として語り継がれているのは面白いですね。

【太郎丸】
そうですね。
鬼も、今回お借りした京友禅も、古くから受け継がれてきたものというところもあり、よいシナジーを感じてます。

伝統の京友禅とデジタルイラストの新たな関係

―― 今回、京友禅とのコラボということで、留袖『菊』の図柄を使用されていましたが。

【太郎丸】
とっても楽しく、とっても大変でした!

―― 大変でしたか。どういったところですか?

【太郎丸】
すごく美しい図柄だったので、どうやってその繊細な世界を自分のイラストに活かすかに悩みましたね。 もちろんどこを切り取っても綺麗なんですが、使い方次第でその美しさを損なってしまう可能性もあったので、難しいと同時に使い所を考えるのは面白かったです。

あと京友禅はそれ自体が一つの完成された作品、図柄ですので、存在感がすごくて。 イラストと京友禅の両方がメインとなるバランスを探るのが大変でした。
せっかく使うなら京友禅もしっかり見せたいですし、でも自分のイラストもちゃんと楽しんでもらいたいですから。

留袖『菊』の草稿。本作に使用したのは05・06・07の3点。

―― 本来は完成された図柄として着物に使われるデザインですからね。
  では、逆になにか発見はあったでしょうか。

【太郎丸】
そうですね。
普段はキャラクターがありきで、その衣装やキャラクターイメージに合うような柄やテクスチャを考えるんですが、今回は図柄ありきでキャラクターデザインや雰囲気を考える……という全く逆のアプローチだったんです。
今回「菊」の草稿をお借りしたんですが、菊の凛とした空気感からイラストのイメージを広げていきました。そのやり方は新鮮だったので、新しい発見と言えるかもしれないですね。

あとは、京友禅というとやはりアナログというか、現物のものという認識が強かったですし、やはり伝統文化で高級品みたいな縁遠いものだったんですが、デジタルになったことで京友禅の世界と距離が縮まった感じはしました。

未知の土壌へ踏み出す道標となってくれる「HINATA」の存在

―― ちなみに、太郎丸先生はNFTでの出品は初めてですか?

【太郎丸】
もちろん初めてです。
聞きかじってはいるんですが、結構ふわっと理解してるせいか率直に言ってまだまだ敷居が高かったので……。なので、今回お話いただいた時もちょっと不安な部分はありましたね。

―― 敷居が高いと感じた部分はどういったところでしょうか。

【太郎丸】
NFTの盛り上がりは、これまでイラストを販売していなかった方は低リスクで挑戦していけるのでとってもいいなと思うんですが、一方で既に有償のお仕事をしているイラストレーターにとっては得体の知れない未知の土壌なんですよね。ブロックチェーンやNFTという新しいシステムの仕組みについて理解する必要がある上で、さらに新たな環境で改めて売れる・売れないの評価を突きつけられることになるので……。

特にNFTは、イラストを描くために技術を磨き上げてきたイラストレーター同士で個性を競うのではなく、お子さんの絵だったり、素材をちょっと加工しただけの画像が売買される魔境(笑)ですから、正直市場が読めなさすぎて戦々恐々ですね。
そういった、今までとは全く性質の違う土壌に踏み出すために勇気がいるというか、壁を感じるのかなと。

―― 確かに、NFTアートは著作権問題さえなければ「何でもあり」の混沌とした部分はありますね。
  イラストレーターさんの美しいイラストだから売れるとも限らないですし。

【太郎丸】
意識的・無意識はともかく、有償のお仕事をされているイラストレーターほど市場やクライアントの需要を掴もうとする傾向にあるので、なおさら混乱しますよね。
このあたりはNFTイラストの出品が増えて、市場が成熟していけばもうちょっと敷居は下がるかなぁと。

まぁあと、みんな興味はあって調べたりはするんですが、なんせステータスをクリエイティブに極振りしてる人が多いですから、仕組みとか規約とかとにらめっこしてる間に挫折するのも大いにあります(笑)

―― そうなんですか!?それはもったいないですね。

【太郎丸】
そうなんです(笑)
そういう意味では「HINATA」さんみたいに、日本のマーケットで、日本円で決済できて、細かいところまで相談に乗ってくれたり質問を聞いてくれて「バックアップはお任せください!」って言ってくれると、イラストレーター的には一歩を踏み出す勇気をすごくもらえて嬉しいというか。安心感しかない!って感じでした(笑)
こんなにクリエイターに親身になってくれるマーケットはなかなかないですし、活動の幅が広がるのは誰にとっても嬉しいことなので、是非いろんなイラストレーターに「HINATA」さんを利用してほしいなと思いました。

鬼たちによる、幻想邂逅の物語

―― では、最後に太郎丸先生の作品の今後の展開をお聞きしてもよろしいですか?

【太郎丸】
はい。今回販売させていただいた鬼娘に続いて、今後も鬼のシリーズを作っていきたいと考えています。

元々キャラクター同士の関係性を考えながらオリジナルイラストを描くのが好きですし、ゲームのシナリオライティングのお仕事もさせていただいてるので、せっかくなら作品に絡めたミニエピソードをつけたりして、鬼シリーズ全体で一つの世界観を作っていけたら面白いかなと思っています。
このキャラとこのキャラは恋人同士だから両方一緒に買っちゃおう!なんて事があったら一番嬉しいですね(笑)

―― 作品の横のつながりができるのは楽しみですね。
  今後の活動も楽しみにしています!


太郎丸コトノハ

イラストレーター
ゲームシナリオライター・ディレクター


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太郎丸

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