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エモをテーマに、心動く情景を描く「あー」氏 × 京友禅デザイン画「草稿」による、時代を超えた新しい表現とは

Illustration | 2022.09.28

Text by Hinata official

  • Feature
  • Interview
  • KYO"NEXT"YUZEN

シンプルな線で他にはないユニークな世界観を表現する「あー」氏。

avex発のダンスミュージックブランド「FUTUREmode」のMVにイラスト提供も行っており、多岐にわたるアート活動を行っています。今回、同氏がチャレンジしたのは、京友禅のデザイン画「草稿」という歴史の中に消えてしまいそうな伝統工芸の意匠を新しいアート作品へと昇華させる取り組みでした。

「あー」氏の作品作りに対する想い、日本を代表する伝統工芸とのコラボという時代を越えた新しい挑戦に対してインタビューを行いました。

「あー」氏 NFT作品ページ:https://hinata-nft.com/creators/works/a-a-a-illust

心が震えるほどの感動に突き動かされた創作活動

――この度は「HINATA」の京友禅コラボ企画にご参加いただきありがとうございます。

【あー】
こちらこそ、このようなご縁がありとてもうれしく思っています。

――そう言っていただけて光栄です!
  まずは、あー先生の普段の活動や経歴についてお聞きできますか?

【あー】
普段はTwitterを中心に活動しています。自身の作品制作はもちろん、アーティストさんなどからのご依頼を受けて絵を描くこともあります。
ご依頼を受け始めたのは、数年前からなんですが、こうやっていろんな方々に見ていただけるのは本当にうれしいことです。

子どもの頃から絵を描くのが好きで、一時期はマンガ家になりたいと思っていたこともあるのですが(笑)、大人になって描くことから遠ざかっていました。そんな時、とある作品に出会って、すごく心が震えてしまって。私も、表現したい!って思ってしまったんです。そこから創作活動が始まりました。

――心が震えるほどの感動とは、よほど衝撃的な出会いだったんですね。

【あー】
そうですね。
なので、基本は自分が表現したいものを、好きに描いています。それを気に入ってくださったり、世界観に共振していただいた方とお仕事させていただく形です。

エモーショナルであり、えもいわれぬ感性を筆に託す

――共振という言葉どおり、あー先生の作品には独特の世界観を感じます。
  現実的な風景の作品、抽象的・空想的な作品のどちらも、どこか懐かしく心を揺さぶられるような気持ちになりますね!

【あー】
そう言っていただけるのはとてもうれしいです!
基本的に「エモ」をテーマに作品を作っていますが、私はこの「エモ」って、本当に日本的な言葉だなぁと思っていて、好んで使っています。
エモーショナル、でもあるし、えもいわれぬ、でもある。場面によって、人によって、いろんな意味を含有する言葉だと思います。あえてふんわりいろんな意味を持たせているのが、いいなあ、と感じています。

――「えもいわれぬ」は目から鱗でした!
  言われてみれば、言い表したい感情というか衝動としては「エモ」と近いものがあります。

【あー】
ですよね(笑)
年代もバックグラウンドも違う人が、同じものを見て、そこに同じく「エモ」を見出すのは、なぜなのか。
私の作品の中での「エモ」は、今までに経験したり、見たことがあるような風景を見た時に感じる、ノスタルジックやセンチメンタル。そしてその風景から想起される感情すべてを指しています。
だから実は、人によって、その体験は異なるものです。私の絵を見て「エモい」と感じてもらえたとしたら、それは、私の描いた「エモ」ではなく、その人にとっての「エモ」です。同じものを見ているようで、同じものを見ていない。でも、それらすべてをひっくるめてしまうのが、「エモ」という言葉なのかもしれない、とも思います。

ふんわりしているものは、ふんわりしたままに。
もっと詳細に言語化する必要は、ないのかもしれません。

――明確な情報は最小限に、受け手の想像で作品を楽しむ……というのは、俳句などの伝統的な日本文学に通じるものがありますね。
  確かに、「エモ」はとても日本的なのかもしれません。

【あー】
まさに、えもいわれぬ、です。
だから、線や色も、できればふんわりしておきたいと意識しています。想像する余白を残したいな、と思いながら描いています。

――そういった「エモ」なイラストのアイディアは、どのようなところから生まれるのですか?

【あー】
旅が好きで、まちの風景や、自然の景色に心をよく揺さぶられます。ふと出会ったそのような景色を題材に描くことがほとんどです。でも、どちらかと言えば、日常の中に埋もれている場所の方が好きです。
旅に出た後、慣れ親しんだ場所に帰ってくるときに感じる新鮮さ、ってありますよね。私はあれが大好きなんです。そのために旅をしているといっても過言ではないかもしれません(笑)
そんな感じで、普通の風景なんですけど、なんだかはっとするような瞬間。そんな感覚を大事にしています。

――帰って来るために旅をする、というのは深いですね。
  身の周りの素敵なものを再発見すると、えもいわれぬ喜びを感じるのはわかる気がします。

【あー】
現実の景色を描くこともあれば、心象風景を描くこともありますが、基本的な考え方は一緒です。
日常の中に、非日常がある。同じように、現実と、非現実も、境目って曖昧なのではないか、と思います。だって、形として見えないものを、私たちは現実に重ねていますよね。最近ではそれがどんどん加速しています。一方で実在としてのものはここにあって。そんな境目探しの実験のようなものなのかもしれません。

シンプルかつ本質を捉える。京友禅の美しい「線」が伝える、日本人の感性

――あー先生は線画が好きと伺ってます。
  今回コラボで使用していただいた草稿はまさに線画の作品でしたが、なにか感じたことはありますか?

【あー】
そうなんです、絵を描く工程で一番好きなのが線画で、いつも終わってほしいような、終わってほしくないような、そんな気持ちで描いています。
今回の草稿は一目見ただけで、その美しさに内側にこみあげるものがありました。

実は、錦絵が好きで、昔の絵師の作品を参考にすることがよくあります。また、和装も大好きで、実際によく着ます。伝統的な意匠や文様、表現にとても興味があったので、今回のこのお話は自分にとっても特別なものでした。
シンプルな中に、対象の美しさを表す本質を汲み取る、古来からの日本人の感性は、本当に素晴らしいものです。また、それが現在の私たちにとっても理解できるということもまた、伝統たる所以なのだと、昔のものに触れるたびに感動します。

特に今回の、友禅では「線」がとても重要な役割を果たしています。
できるだけ、その美しい線の表現を残しつつ、どう自分の表現をしていくか。草稿やその当時に思いを馳せながら線を描くのが、なんだか厳かで、自分の中でもとても新鮮な体験でした。

不変な美しさを持つ菊と少女、そして京友禅へのリスペクトを込めて

京友禅草稿《留袖『菊』》

――コラボ作品を創作されるにあたって、なぜ菊の草稿を採用されたのでしょうか?

【あー】
自身の作品でも植物を取り扱うことが多いので、菊に惹かれました。
また、菊がその時その時でいろいろな表情を持つのが、とても面白いと思ったからです。

仏花として供えられることも多いので、死を連想する人もいれば、着物に描かれる菊は縁起が良い、長寿の象徴としての意味を持っています。天皇家の家紋として使われるほど格式高い一方で、庶民にも愛された身近な花だったので様々なモチーフとして親しまれています。そんな様々な意味を持つ菊がとても魅力的に感じました。

また、草稿の菊がなぜこんなにも心を揺さぶるのかと考えた時に、やはりそこには本質的な美しさが表れているからだ、と思いました。時代が変わっても、変わらずにそこにあり続けるもの。絶えず変化する中にふと見える、変わらないもの。それが美しさなのではないか、と。

そういう意味では、私の作品によく登場する少女も、実はその象徴です。
人は誰しも老いて死に向かいますが、内側にはいつまでも変わらない少年や少女がいるものです。すぐに過ぎ去ってしまう儚さと、相反する永遠性。そこに、私たちは美しさを見出すような気がするのです。

――なるほど。確かに『青春』と呼ばれる年頃への輝かしさや感傷は、いつの時代も変わらず、そして誰しもが持っていますね。
  少女以外にも、あー先生がイラストに込めたものはありますか?

【あー】
今回は、白い菊の花を育てている場面の絵です。
西洋の花言葉では、白い菊は「真実」を表します。
はるか昔から、これからも続いていく時代の中でも、きっといつでも真実はあり続けます。でも、私たちにとってのそれは、色々な表情で見えるかもしれません。それでも、私たちはいつだって自分にとっての真実を育て続けます。
歴史が続いていくように、連綿と続いていく花畑は、咲き乱れる菊の花で満たしました。
細かい線ですが、草稿を参考にしつつ、自分の線で一つ一つ描きこんでいたので、ぜひ見てほしいです。

コラボ作品『つづく』の制作動画

――一輪ずつ線画を起こしたんですか!
  草稿(下絵)があるとはいえ、大変な作業だったのではないでしょうか。

【あー】
そうですね。
かなり描きごたえはありましたが、少しずつ花が増えていくのが楽しくて、夢中で描いていました(笑)。

友禅では草稿を元に下絵を描いた生地の線上に糊を置き、隣り合った染料が混ざり合わないよう堤防の役割を担う「糸目」を描き、筆で彩色していきます。
その後、友禅流しでも有名な「水元」と呼ばれる作業で糸目上の糊を落とすと、生地が現れ白い状態で浮かび上がります。その後、その線上に金色を入れたり刺繍を施すそうです。
私は、水で洗われた後に浮かび上がる白い線がとても美しいなと感じていて、今回の絵でもそれを参考に、通常の線画に彩色した後にいったん線を白く抜き、周りの色調と合わせて緑がかった色を線に入れました。

色の境目を糊で描いた線「糸目」に沿って手描で染めている。
友禅の工程『水元』。
蒸し終わった生地の糊料や薬剤などを洗い流している。

――あー先生の、京友禅に対する愛情や敬意を感じる素敵なエピソードですね。

【あー】
ありがとうございます。
それにしても、伝統的な友禅の工程は、本当に複雑かつ緻密なもので、改めてその美しさの裏側にある職人さんたちの努力や忍耐を知ることができました。
素晴らしい友禅の伝統が、これからも続いていくことを心から願います。

今後の活動について

――今回、京友禅コラボ作品でNFTデビューされたわけですが、あー先生は今後もNFT作品を発表していくのでしょうか?

【あー】
NFTデビューがこのような形で出来たこと、本当にありがたく感じています。
これからも、色々な形で表現ができたらいいなと考えていますし、NFTに関してもマイペースにリリースしていきたいです。

自分らしく、描きたいものを描き続けていけるよう、のんびりやっていますが、作品を楽しみにしてくださっている方や、好きだと言ってくれる方に本当にいつも励まされています。ありがとうございます。
これからも引き続き、どうぞよろしくお願いします!

――今後の作品も楽しみにしています。ありがとうございました!

京友禅の伝統美を現代に、未来に。『KYO ” NEXT” YUZEN』プロジェクト

 「HINATA」では、株式会社 関谷染色とともに立ち上げた「KYO ” NEXT” YUZEN」プロジェクトを推進しています。
 「KYO ” NEXT” YUZEN」プロジェクトは、京友禅のデザイン画として制作された「草稿」を、デジタルデータへ変換し、NFT化し販売することで、京友禅の伝統的なデザインを保存し、未来へ伝えることを目的としています。
 さらに、現代の各ジャンルのアーティスト・クリエイターと、伝統工芸の京友禅をかけ合わせることによって、新たなイマジネーションを生み出すことも積極的に行っています。

 KYO ” NEXT” YUZEN https://www.official.hinata-nft.com/sekiya-sensyoku/

 イラストレーター、写真家、書家、デザイナーなどなど、どのようなジャンルのアーティスト・クリエイターでも歓迎です。
 京友禅とともに描く、新たなイマジネーションをお待ちしています!

 お問い合わせ:info@hinata-nft.com


あー

エモを愛し、絵を描きます。

自分のことじゃないのに、
自分のことのような。
経験したことないのに、
経験したことのような。
懐かしいような、
はじめて見るような。
そんな絵を描きたいです。

(大体Twitterにいます )

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