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和風から洋風まで艶やかに描き上げる現代の浮世絵師「オノ・タコ」氏 × 京友禅デザイン画「草稿」。浮世絵と伝統芸能の妙なる共鳴を描く。
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- Interview
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東洋的なデザインはもちろん、西洋的で華やかな衣装のキャラクターさえも浮世絵風に描きあげる、現代の浮世絵師「オノ・タコ」氏。
和と洋、現代と過去、様々な要素を美しいバランスで共存させるオノ・タコ氏が、今回HINATAで伝統工芸「京友禅」とのコラボレーション作品を創り上げるにあたって、氏の創作観や京友禅について感じることをインタビューしました。
目次
「浮世絵風」という、独自の世界観を描く
―― この度は「HINATA」の京友禅コラボ企画にご参加いただきありがとうございます。
【オノ・タコ】
初めまして!主に和風の人物イラストや漫画などを描かせていただいているオノ・タコと申します。
元々はゲームや漫画、アニメが好きなオタクですが、ファンアートをきっかけに2018年ごろから商業のお仕事をいただくようになりました。
本業は絵と無関係のため、創作のお仕事は余暇で取り組んでいます。
基本的には趣味の創作をSNSで公開し、その合間にお仕事として描かせていただいている形です。活動拠点はTwitterです。
柔らかく、理想を描く東洋的な線に魅せられた
―― 初めて拝見したオノ・タコ先生の作品は、ゲーム作品のファンアートだったのですが、洋装や甲冑のような全く和の要素がないキャラクターも非常に美しい『浮世絵』になっていて、本当に衝撃的でした。
何故このような浮世絵風イラストを描くようになったのでしょうか?
【オノ・タコ】
昔から浮世絵や仏像などの東洋的な柔らかく美しい「線」が好きでした。
ほかにも線が美しいものとしてアニメーションの作画にも憧れがあり、自然と自分が描く際も線にこだわるようになりました。
しかし長いこと特に和風であることは意識せずに、納得のいく線や人体を描ければいいと考えていたので、今の浮世絵風とは全く違った作風だったんです。
ところが、いつしか自分の絵柄の個性の無さに悩むようになりました。
―― そうだったんですね。作風を転換するきっかけはなんでしたか?
【オノ・タコ】
2017年ごろからドはまりしたソーシャルゲームがきっかけです。
そのゲームのファンアートは数もクオリティもすさまじく、同時に作品ごとに感じられる個性に強い憧れを抱くようになりました。
実は10年ほど前に初めて和風を意識した初音ミクのファンアートを投稿していたのですが、当時はあまり需要がなかったようで自分もすぐに描くのをやめてしまったんです。
そのことをふと思い出した時、ちょうど好きなソーシャルゲームで浮世絵に深い縁のあるキャラクターが登場しまして。これは描くしかない!と思い、なんとなく染みついていた感覚で描いた浮世絵風のファンアートを投稿したところ、ありがたいことに多くの反響をいただき、それ以降、継続して和風のイラストを描くようになりました。
―― 培ってきた感性がついに認められたんですね!
和風作品から一度離れてしまわれていただけに、嬉しさもひとしおだったのではないでしょうか。
【オノ・タコ】
そうですね。
やはりご反応いただけると嬉しくなるのが本音ですが、一方で、続けられているのは自分にとって描きやすい画風だった、というのがあります。
また、モチーフが和風でなくでも違和感があまりない、というのはご感想によって逆に知ったくらいで、実はあまり深く考えずに描いていました。(笑)オタクにとってはやはり原作が至高なわけですので、そのキャラが洋装や甲冑姿なのであれば極力そのまま描きたいと思っています。
草稿を主役とした作品づくり
―― コラボ作品は華やかな着物のイラストですが、どのようにデザインや構想を広げていきましたか?
【オノ・タコ】
使用できる京友禅の膨大な数の草稿を拝見したときに、まずは女性が身に着けているものの絵柄に使おうと考えました。
私の要望でさらにいくつかの草稿を見せていただいたときに『橋と草花』を見て、あまりに素敵だったので逆にこちらを背景として使い、その背景になじむ形で女性の服に取り入れることにしました。
なので個人的には人物よりも背景に目が行くようにレイアウトしたつもりです。
―― 背景となる草稿をベースに作品を組み立てていったということですね。
【オノ・タコ】
『橋と草花』と『菊』の柄を選んだ理由は、私が花の絵が大好きだからです。普段から何か絵に足りないな、と思うと花を描こうとします。(笑)
今回お借りした草稿には春の花がたくさん描かれていますので、色合いも淡くも明るく、暖かいものにしてみました。
京友禅と浮世絵、同じ時代の文化を現代に
―― 先生は柔らかい東洋美の線を好まれてるとのことですが、草稿も同じく柔和な線で描かれているものが多くあります。草稿を題材に浮世絵を描くことでなにか感じた部分はありましたでしょうか?
【オノ・タコ】
それはもう、たくさんありました!(笑)
作品に使うため草稿の細部を拝見して、その線の美しさが分かった時、思わず見とれてしまいました。製作中は自分の絵に集中すべきなのですが、ついつい草稿の方を眺めている時間も多かったと思います。
現代ではデジタルと手描き、どちらも身近にはなりましたが、古典的な画風を目指す以上は手書きに勝るものはないと考えています。
失敗しても修正が許されないからこそ、一筆一筆に込められた重みが違います。自分など足元にも及ばない職人技を、叶うことなら間近で拝見したかったです。
―― 完成品の京友禅とは全く違った、手書きの線画ならではの美しさや風合いがありますよね。
【オノ・タコ】
美しさという言葉に関連してですが、今回の作品では令和の時代でも変わらない普遍的な美というのを一枚にまとめることができたら、と願いを込めて描きました。着物の着こなしや髪型をあえて現代風にしたのはそういった理由です。
浮世絵とは普段の生活と人々が思い描く理想像をうまく融合させたものだと捉えているので、今回の作品から”歴史”と”今”と”理想”を感じていただければ幸いです。
―― 京友禅と浮世絵はどちらも江戸時代の文化ですが、現代の価値観として描くことでより歴史の深みを感じる作品になったわけですね。
今後の活動について
―― 今後もNFT作品をリリースしていくご予定はありますか?
【オノ・タコ】
NFTというワードを多く見聞きするようにはなりましたが、今回のオファーがなければ自分が挑戦することはなかったかも知れません。
なので今回機会をいただけてありがたく思っております。とはいえまだNFTについては勉強中のため、リリース後の様子をうかがいながら検討できればと思います!
また、今後の活動については本業との両立を図りながら、描きたいときに描くというゆるいスタンスで取り組めたらと考えています。
イラストレーターのオノ・タコとしては和風を主軸に、しかしこれまで通り一つに絞らず様々な絵柄、媒体、形で作品作りを続ける予定です。
またこれまでは人様のキャラクターを描かせていただくことが多く、それによる甘えも大きかったと痛感しているので、キャラクターデザインなどオリジナル作品を増やして創作者としての精神的な自立を目指しています。
―― ぜひまたHINATAでお会いできることを楽しみにしています!ありがとうございました!
オノ・タコ 《春の夢路》
京友禅の伝統美を現代に、未来に。『KYO ” NEXT” YUZEN』プロジェクト
「HINATA」では、株式会社 関谷染色とともに立ち上げた「KYO ” NEXT” YUZEN」プロジェクトを推進しています。
「KYO ” NEXT” YUZEN」プロジェクトは、京友禅のデザイン画として制作された「草稿」を、デジタルデータへ変換し、NFT化し販売することで、京友禅の伝統的なデザインを保存し、未来へ伝えることを目的としています。
さらに、現代の各ジャンルのアーティスト・クリエイターと、伝統工芸の京友禅をかけ合わせることによって、新たなイマジネーションを生み出すことも積極的に行っています。
KYO ” NEXT” YUZEN https://www.official.hinata-nft.com/sekiya-sensyoku/
イラストレーター、写真家、書家、デザイナーなどなど、どのようなジャンルのアーティスト・クリエイターでも歓迎です。
京友禅とともに描く、新たなイマジネーションをお待ちしています!
お問い合わせ:info@hinata-nft.com
オノ・タコ
趣味が高じ、2018年ごろより兼業としてイラストや漫画のお仕事を少々。
和風メインですが、なんでも描きます。
Twitterが活動拠点です。
オノ・タコ
NFTプラットフォーム「HINATA」(2022年1月11日公開)