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【AI×イラストレーター】新たなクリエイティブの形へ
- Feature
- Interview
イラスト生成AIとクリエイターの融合という、全く新しい形のイラストレーターユニット「AiShe(アイシー)」と「AiHis(アイヒズ)」。
2人の取り組みや思想をインタビューを通して深掘りしてみました。
2.5次元イラストレーターという新しい概念
―― どうぞよろしくお願いいたします。まずは自己紹介からお願いできますか?
【AiHis】
2.5次元イラストレーター「AiHis」です。
イラスト生成AIを作っている方とご縁があって、AIが作った画像をリライトする新たな創作をやらないかとお誘いをいただいてここに居る次第です。
【AiShe】
同じく、「AiShe」です。
趣味でお絵かきしていただけの人間なので……自己紹介としてお話できるような経歴は、正直ありません(苦笑)。
―― すでに情報量が多くてどこから質問するか迷うところですが、まずは2.5次元イラストレーターとは?
【AiShe】
勝手に命名しました(笑)。
『2.5次元』というと、漫画やアニメの舞台化とかVtuberなどをイメージされるかなと思いますが、私達に関しては『2次元のAIと、3次元の私達が歩み寄ったら中間地点が2.5次元だよね』って感じです。
【AiHis】
仮に僕たちにVtuberのガワが実装されたら、2.25次元イラストレーターですかね。
【AiShe】
ですね。どんどん2次元のほうに寄ります(笑)。
―― (笑)
AIと共に創作する世界を目指して
―― 気になるワードが出てきましたね。『AIに歩み寄る』とはどういうことでしょうか。
【AiHis】
そうですね。僕たちの活動コンセプトなんです。
【AiShe】
AI作成者の方には大変失礼になる言い方ですが、イラスト生成AIと言っても結構不完全なものでして……。ちょっと言いにくいですが、顔面が崩壊してたり、体がいびつになることがほとんどなんですね。AIがどういうイメージしたのかはギリギリわかる!くらいの感じです。
―― 確かに。
何点か拝見しましたが、整っているところと整っていないところの差が激しいというか……。
【AiHis】
人によっては『閲覧注意』なものも多いですよ。夢に出たら飛び起きそう(苦笑)。
【AiShe】
その一方で、服飾デザインや背景描写に関しては抜群に面白いもの・美しいものを生成してくれるんです。もちろん、一流のイラストレーターさんたちであれば創造できるでしょうが……少なくとも私達のような、趣味でお絵かきしてる程度の人間からは出て来ないイマジネーションが多いですね。
なので、既成概念にとらわれないデザインをAIが作り出して、私達は『AIは何を描きたかったのかな?』を汲み取って形を整えていく……というのが、お互いが歩み寄るということだと思っています。
―― 失礼な話ですが、AIのことを隠して自力だと言い張る事もできたのでは?
【AiShe】
AIはどう扱っても文句は言いませんから、もちろん可能です。でも他人の感情に訴えかけたり、想いを投げかけるのが創作なのに、AIの感情というものを考えずに我が物顔するのはなんだか足場が定まってないような気がして。
かといって、元絵を並べて公開するのは……AiHisの言った通り『閲覧注意』なものが結構あって、見る人によっては不快な思いをさせてしまうのでできないし……。
ということで、AIも同じ作品制作者である証として、名前に「AI」を入れました。
―― なるほど。AIもあくまで一人の創作者ということですね。
【AiHis】
どっちも半人前なんですよね、AIも僕らも。
【AiShe】
半人前同士でも得意なところを補い合えば、今まで生まれなかったような作品を作ることができる。それがAIとユニットを組むことの最大の楽しさかなと。
【AiHis】
上手くなった気になっちゃうよね(笑)。
【AiShe】
なるよね(笑)。
でもそれもいいんじゃないかなって私は思うんです。
多くの人は創作の苦しみこそが創作の楽しみなのでは?と思うでしょうし、だからこそAIによる創作なんて邪道だと仰る方もいると思うんですが……。でも、創作の苦しみが重すぎて、絵を描くことが楽しくなくなってしまったら、すごくもったいないことだと思うんです。私達みたいに趣味で絵を書いてる人だと特に、そこまで創作と真正面に向き合う人ばかりでもないでしょうし。
そういうとき、AIの助けで苦しみを乗り越えられたら、あるいは新たなインスピレーションが生まれたら、それはAIの存在がポジティブなものになるんじゃないかなって。
―― AIがいることによって、人間側のクリエイティブが一段階進化する可能性があるんですね。
【AiShe】
そうですね。
なので、お供AIって感じで誰もがいろんなAIと気軽に創作活動できる世界になるといいなと思います。
AIを知ると、人間の最強さを知る
―― ここまでお話を伺っていて、お二人はAIと共存共栄の関係を目指していることが伝わってきました。
しかし、クリエイターの中にはAIの進化で仕事が奪われると危惧する方も多いのではないでしょうか。
【AiShe】
私も実際見るまではそう思ってました。
【AiHis】
そもそも僕たちはちゃんとしたイラストレーターではないけど(笑)。
【AiShe】
でも今使っているAIが成長していったとして、人間の創作性を凌駕するような現象が起きるかというと正直難しいと思いましたね。
―― そうなんですか?
【AiShe】
うーん、感覚的なものなんですが……。
今起きているような顔面崩壊や歪みがなくなったとして、じゃあそれが人間のイラストに勝るかと言われると微妙な感じなんですよね。
一流イラストレーターの作品が10点だとしたら、AIイラストは7か8くらいで落ち着きそうな気がします。色の使い方とかすごく綺麗だし工数がかかる背景も一瞬で作っちゃうけど、整ってるだけ……みたいな。
今風に言えばあれです、エモさが足りない。
【AiHis】
実際、一流イラストレーターさんでも「書き込みがすごいわけでも整ってるわけでもないけど、なんかいいよね」って方はいますよね。手癖からくる味であったり、作画の嘘(※演出のためにわざと誇張すること)がすごい上手だったり、崩しが上手かったり……そういう生の感性や個性ってやっぱり最強だなって。
だからどこまでいっても、AIがクリエイターに成り代わるというようなことは起きないんじゃないかなぁと僕も考えてます。
【AiShe】
あとキャラクターについては、AIは画風安定しないですしね。
人間が当たり前にしている、色んな人相を同じ画風でデザインするってことができないのは、クリエイターとして個性を確立させる上では結構致命的かも。
―― それは確かに。
【AiShe】
なのでやっぱり人間が最強だわ(笑)っていうのが、実際にAIに触れてみた私達の結論です。
開拓者として
―― 最後に、今後の展望などありますか?
【AiShe】
AIについては私達は借りてるだけなので言えることはあまりないんですが、私は主にキャラクターものを、AiHisは恐竜やロボといった方向で作品を作る予定ではあります。
もしかしたらいずれは背景オンリーとか、AIイラストをそのまま販売することもあるかもしれないですね。
【AiHis】
僕たちの作品は商用利用OKなので、もしも気に入った作品があれば是非使っていただけたらと思います。そういった需要が高まれば、もっとAIの開発が進んで、もっと面白いコラボレーションがたくさん生まれるかもしれませんしね。
いずれにせよ、まだまだ未知数な分野ではあるので、2.5次元イラストレーターという新たな概念の開拓者としてのんびり活動を続けていければと思っています。
―― ありがとうございました。今後の活動も期待しております!
AiHis & AiShe
AI+人間という新たな形の”2.5次元”イラストレーターユニット。
プロフィール画像もAIによるもの。
恐竜やコンセプトアートといったロマン系イラスト(本人談)をメインとするAiHis(アイヒズ)と、キャラクターものメインのAiShe(アイシー)、そして日々成長を続けるイラスト生成AI。
それぞれが得意とする能力を提供することによって、作品を創り上げていく。
目下、AIに名前をつけてあげることが最初の目標とのこと。
NFTプラットフォーム「HINATA」(2022年1月11日公開)