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京友禅デザイン画「草稿」×伝統文化を愛する萌えイラストレーター「オムレットマト」氏。”伝統文化×萌え”がもつ無限の可能性を探る。
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- Interview
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大手企業の企画商品やゲームのキャラクターイラストを手掛けるなど、多数の分野で活躍するイラストレーター「オムレットマト」氏。
同人誌に代表される現代の萌え文化と、伝統文化の「京友禅」。文化コンテンツとして対極とも感じる2つの融合はどのようなかたちで行われていったのでしょうか。
目次
自身ではなく、『キャラクターが自己表現をする』創作
―― この度は「HINATA」の京友禅コラボ企画にご参加いただきありがとうございます。
【オムレットマト】
こちらこそお声がけくださりありがとうございます!
そして皆様、初めましての方は はじめまして…!オムレットマトと申します。
一度は一般企業に就職するも、小さい頃から夢だったイラストレーターを諦めきれず2年ほどで退職し、それから地道に活動を重ね、ようやく大きなお仕事もいただけるようになりました。
現在は民族の文化的な意匠を取り入れたものから、二次元ならではの獣耳など様々な美少女を描いております。
さらに、体を守るだけでなく、普通の服以上に気分が上がるデザイン性の高いランジェリーに心を惹かれ、それらを纏って生き生きと自己表現をするオリジナルキャラクターの創作も行なっています。
―― イラストレーターではなくキャラクターが自己表現をする、というのは面白いですね。
先生が得意とするジャンルは『萌えイラスト』ですが、そのルーツやきっかけは何でしたか?
【オムレットマト】
小さい頃から見ていたアニメ・漫画・ゲームの影響が大きいですね。
特に少女向けの作品が好きでした。ふわふわで可憐なのに、変身して戦ったりとエネルギッシュ!なところが、可愛くもかっこよくて。
もしかしたら、二次元への強い憧れを今も絵にぶつけ続けているのかもしれません。
―― 確かに、先生の描かれるイラストも可愛くもかっこいい女の子が非常に多いですね!
女の子を魅力的に描く上で、先生が重要視するポイントはありますか?
【オムレットマト】
そうですね、色々あるのですが……!
正しい形にこだわるのではなく、嘘もつきつつ収まりのいい構図・パーツの大小と位置の違和感がないよう、人体のバランスに気をつけています。
あとは、特に瞳と髪の毛ですね……!
瞳は完成させたい方向性で切長・丸目・垂れ目かつり目、書き込むか否かなど決めてます。
髪は毛量が多いなら、もさっとハネさせたり、風になびかせるならサラツヤで細くしたりと個性を持たせるようにしています。
現代的な萌えイラストの中に、深く息づく日本文化
―― コラボイラストの創作テーマは『伝統文化』と伺っていますが、イラスト1枚にいろんな要素が詰まっているように感じます。
【オムレットマト】
確かに色々詰め込んでいますね……!
でも、伝わりやすさには気をつけました。
まず、構図は国宝「見返り美人図」をモチーフにし、つい目を奪われる一瞬を切り取る事を意識しています。また京友禅の起源は扇絵師の宮崎友禅斎でありますので、ぜひ”扇子”も取り入れたいと決めました。
背景では、日本的にデフォルメされた川や山々の自然を表現したくて「菊」を初め自然が描かれた草稿を選んでいます。特に「竹」は日の出なら”お正月”、月であれば”かぐや姫”といった伝統も表せるのでピッタリだと思いました。最後に、どこか懐かしくなるような景色にも思いを馳せて欲しく、時間ごとに表情の変わる空を描きました。
―― 扇子にまで理由があったとは驚きです!
私としては切り絵を彷彿とする背景デザインも日本らしくていいなと思いますが、このような構成は最初から固まっていたんでしょうか。
【オムレットマト】
いえ、そうでもないです。
まずは多くの人が感じる”京友禅”と”萌えキャラ(二次元の美少女)”の魅力とはなんだろう……と探るところから始めました。
“京友禅”は華やかな柄・金や刺繍・優美な意匠が多くの人を魅了する要素だと思っています。
一方で“萌えキャラ”は、デフォルメされた身体パーツ・滑らかな肌など、多くの人が理想とするような姿かたちが魅力の一つです。
では、”京友禅”と”萌えキャラ”の魅力を掛け合わせたらどうだろうと。
着物は人が着るものですから、たとえ二次元の美少女が合わさっても違和感なく馴染みました。
―― 他にも、なにか作品を描く中で裏話などありましたら是非お聞かせください!
【オムレットマト】
そうですね、裏話といえば……最初はリボンやフリル、現代的な小物で飾った「Kawaii着物案」も考えていました(笑)
今回は京友禅の繊細さを生かしたかったので断念したのですが、また別作品で挑戦したいですね……!
沢山語ってしまいましたが、それだけ絵にこめた”伝統文化”への気持ちは強いと思います。
この1枚から”日本の情景”×”京友禅”×”萌え”の調和を感じて頂けたら幸いです。
イラストレーターとして感じる、伝統文化が遠い存在になることの危機感
―― そんな伝統文化や日本の文化を愛してやまないオムレットマト先生ですが、今回京友禅の草稿を見て、どんなことを感じ取りましたか?
【オムレットマト】
もともと幼い頃から偉人漫画を漁ったり、歴史が得意科目なのもあって和装や伝統文化には興味がありました。なので、和装などの意匠には多く触れているとは思っていたのですが、草稿を見た時、あまりにも緻密な柄に思わず感嘆いたしました。
同時に、その職人技にクリエイターとして謎の嫉妬もしました(笑)
主観を交えてお話させていただくのですが……日本の伝統文化には、京友禅含め様々な分野で「八百万の神」(全てのものが魂を持つ信仰)、「四季」、「天災」といった”自然”への畏怖が深く関わっていると思います。自然を尊びながら流行を取り入れ、現代にも残っている事にはとても心を惹かれてしまいますね。
しかし同時に、過去から現代まで続いている、世界的にも貴重な文化が身近にあるのに描かないのは勿体無い! とイラストレーターとして危機感があります。
ただ、そう言いながらも私は毎日パソコンに齧り付き、生活に追われるばかり。
だからこそ、今回のように本物に触れる機会に恵まれて非常にラッキーだと感じています。
―― 先生が日頃から憂いていた事と本プロジェクトが、偶然にもシンクロしていたんですね。
【オムレットマト】
本当にそうなんです……!
何かと忙しないご時世ですから、皆さんも同じように日々に追われているのではないのでしょうか。
これを機に、共に文化の価値を再認識しあえるよう、ぜひ多くの人とNFTにて受け継いでいけたら嬉しいです。
今後の活動について
―― 最後になりますが、今後もNFT作品をリリースしていくご予定はありますか?
【オムレットマト】
絵に込めた思いや説明まで含めて”作品”として見てもらえるNFTは私にはとても魅力的です。
一目でわかる共感を大量消費するSNSとはまた違ったアプローチができるのも面白いので、続けていきたい気持ちが強いです。
また、“伝統文化”×”萌え”は大きな進化の可能性を秘めていると感じているので、個人の創作活動でも深堀りしていきたいと思います。
―― ありがとうございました!
京友禅の伝統美を現代に、未来に。『KYO ” NEXT” YUZEN』プロジェクト
「HINATA」では、株式会社 関谷染色とともに立ち上げた「KYO ” NEXT” YUZEN」プロジェクトを推進しています。
「KYO ” NEXT” YUZEN」プロジェクトは、京友禅のデザイン画として制作された「草稿」を、デジタルデータへ変換し、NFT化し販売することで、京友禅の伝統的なデザインを保存し、未来へ伝えることを目的としています。
さらに、現代の各ジャンルのアーティスト・クリエイターと、伝統工芸の京友禅をかけ合わせることによって、新たなイマジネーションを生み出すことも積極的に行っています。
KYO ” NEXT” YUZEN https://www.official.hinata-nft.com/sekiya-sensyoku/
イラストレーター、写真家、書家、デザイナーなどなど、どのようなジャンルのアーティスト・クリエイターでも歓迎です。
京友禅とともに描く、新たなイマジネーションをお待ちしています!
お問い合わせ:info@hinata-nft.com
オムレットマト
NFTプラットフォーム「HINATA」(2022年1月11日公開)