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【ボードゲームNFT】愛好家から世界へ、NFTという武器を手に新たな舞台へ
- Feature
ボードゲーム×NFT
「ボードゲームをまるごとNFTとして販売することはできますか?」
私達『HINATA』にご相談してくださったのは、アナログからデジタルまで幅広くゲームを開発・制作・販売されているSH-GAME企画開発室の星弘高氏でした。
ボードゲームとは、テーブル上で行うゲームの総称で、馴染みのあるもので言うとトランプやチェス、麻雀などが該当します。今回のテーマとなるボードゲームは、個人やサークルで考え出されたオリジナルゲームが限られた数量で頒布された、愛好家たちの間で流通する作品のお話です。
今回同氏が『HINATA』にNFT化を提案したのは「生み出したゲームを誰かに託す仕組みが普及するきっかけにしたい」という、意外な理由でした。
そして、仕組みが必要だと思ったのは、日本のボードゲーム業界の事情が関係しているといいます。
日本のボードゲーム業界が抱える、特殊な事情
星氏は、友人から「すごく評判がよかったのに、作者の都合で再販できなくてもう手に入らないゲームがある。もっと誰かに勧めたいのに、もうプレイ人口を増やせない状況なのはもったいない」というお話を聞いたそうです。
日本のボードゲームの多くは同人活動やサークル活動など、商業としての利益を目的としない個人や小規模団体によって作られることが多いそうです。
一般的な企業が生産・販売するゲームであれば、人気の出たタイトルは再販して利益を伸ばす選択肢は当然考えられます。しかし、そういったサークルで活動するゲームデザイナーは、自分が思いついた新たなゲームを形にすることが最大の目的であるため、完成し販売したゲームを長く生産し続けることはあまりありません。
優れたゲームを生み出せるデザイナーであればあるほど、限りある資金を既存作品の再生産に割くよりも、新作をどんどん世に出したいという思いも当然あるでしょうから、なかなか再販されないのも仕方のないことなのかもしれません。
ボードゲームを愛する全ての人達の共有財産になることを願って
ボードゲーム界隈のそのような事情に対して、星氏が一つの解決策として思いついたのがNFTでした。製品ではなく、ゲームデータ『そのもの』を製造・販売権ごとNFTとして販売するというのです。
星氏によれば、もしボードゲームがNFTを使って売買できれば、全ての人にメリットがあるといいます。
企業にとっては、開発リソースをかけずに購入するだけで自社プロダクトを増やすことができるし、原作者の販売実績がわかれば売上予測の立てやすい商材となる可能性があります。
またはファンや有志が購入し、作者の想いやイマジネーションを継いで作品を再び流通させたり、時代に合わせて発展させたりすることももちろん可能です。
そしてユーザーは、かつて楽しんだ思い出の作品や、初版当時知らなかった隠れた名作が再販されることで、いろんなタイトルを末永く楽しむことができる。
ゲームデザイナーなどの原作者にとってはさらにいいことずくめです。
自分たちの作品がNFTとしてブロックチェーン上でデータが保存され、永続的に残っていくことに加え、売買が成立すれば新たなゲームを作るための資金も得られます。人気タイトルが広く知られることによって新たな縁が得られたり、キャリアとしてお仕事に活かすことも考えられます。
そして何より、世界中どこからでも購入できるようになることで、作品がローカライズされて遊んでもらえる可能性もあるのです。自分が生み出したゲームが、実は見知らぬ海外で大流行した……なんて、ゲームクリエイターにとって非常に夢のある話ではないでしょうか。
「原作者たちが知恵と工夫と情熱を絞って生み出されたボードゲームが、今もたくさん誕生しています。
それを、ボードゲームを愛する全ての人達の共有財産として――究極には、フォントのようなオープンライセンス化が普及できれば素晴らしいことですし、その先駆けとして歴史に名前を残せると嬉しく思います」と、同氏は私達に語ってくれました。
想いの継承をHINATAがお手伝いします
HINATAは全てのクリエイターに陽が当たることを目指したマーケットプレイスですが、今回の星氏のお話は一部の愛好家の中だけの世界……まさに「陽が当たらない世界」で知らぬ間に起きている、クリエイティブの損失といえるお話でした。
NFTでの販売が、この問題に一石を投じることは間違いないでしょう。
しかし、もし個人の方がゲームを気に入って購入したとしても、データが手渡されるだけでは再生産まで辿り着かず、結局死蔵してしまう可能性があるのではと思いました。それでは星氏の考えるボードゲームの保存・継承という目的は達成されません。
NFTとして世に送り出す場所を提供するだけでなく、何かお手伝いできることはないだろうか。
そこで、印刷・製造・そしてお手元へ――つまり製造が可能な印刷工場と購入者が直接連絡ができる窓口をご案内し、『再製造までの道のりをHINATAが支援する』という形で、星氏の試みをお手伝いさせていただくことにしました。
あくまでボードゲームの保存・継承を支援するのが目的のため、購入したゲームはHINATA紹介の工場でしか製造できない……というような制限は一切ありませんし、もちろんHINATAへ別途紹介料をいただくようなことは決してありません。
全てのクリエイターに陽の光を。
そしてNFTがより身近な存在となるように――。
星氏の取り組みは、ボードゲーム業界全体にとっても、私達HINATAにとっても、新たな一歩となるかもしれません。
SH-GAME企画開発室/星弘高
ゲーム業界15年のゲームクリエイター。 コンソールゲーム8本、スマホソーシャルゲーム2本のプランナー、シナリオディレクション、およびスクリプトなど幅広く開発や運用に携わる。 海外でも大人気の漫画など、多数のIPゲームタイトルの開発にも参加。 現在はフリーランスとして活動中。 個人としても、VRゲームやハイパーカジュアルなどのゲームアプリ5本をリリースする一方で、アナログゲームを使ったゲーム会を主催したり、ゲーム業界で働いている人を集めた交流会などを開催するなど、アナログゲーム(ボードゲーム)を盛り上げるための活動も精力的に行っている。
NFTプラットフォーム「HINATA」(2022年1月11日公開)