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NFTチケットとは?特徴から事例やプラットフォーム、課題まで解説
NFTチケットは、今後チケット販売の主流になる可能性があることを知っていますか? すでに大手サッカーチームを始めとしたスポーツ団体の事例が複数あり、将来性に期待できる分野です。
この記事では、NFTチケットの特徴や事例などを交えながら、今後の将来性についても解説します。
1.NFTチケットとは
NFTチケットとは、NFTを利用してチケット販売の健全化・活性化を図り、ファンにより多くの価値を与える仕組みです。
NFTとは「Non−Fungible Token」の頭文字を取った言葉で、「代替不可能性のあるトークン」という意味を持ちます。代替不可能なので、不正利用や拡散ができず、コンテンツ作成者の権利が正当に守られるのが特徴です。
従来のチケット販売は、高額で転売されたり偽物が売られたりして消費者が損するケースがありますが、チケットをNFTにすると販売履歴がすべてデータとして残るため、消費者がそのリスクを負う可能性が低くなります。
また、チケットを購入し、継続して保有することでアーティストやスポーツチームが提供する特典を受け取れたり、NFTの追加配布を受け取れたりなどのメリットもあります。
2.NFTチケットの特徴
NFTチケットの特徴は以下の通りです。
- チケットの転売や詐欺が減る
- チケットを保有する価値が増える
- チケットを購入する手間が減る
(1)チケットの転売や詐欺が減る
従来のチケット販売は転売ヤーによって買い占められ、通常価格より高い値段で売られている事例が多発しており、問題視されていました。2019年6月に「チケット不正転売禁止法(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)」が施行されたものの、いまだ根絶されてはいません。
しかし、NFTにするとチケットの販売履歴がすべてブロックチェーンによって残ります。販売元を容易に特定できるため、転売の抑止につながります。
また、販売元が判明すると、そこから「そのチケットをどんな人が発行しているのか」もある程度わかります。そのため、従来の偽チケットを使った詐欺も起きにくくなります。
(2)チケットを保有する価値が増える
従来のチケット販売は、アーティストのライブが終わったりチームの試合が終わったりすると、思い出の品になってしまうだけでした。
ただ、NFTチケットは継続的に保有していると、チケットの販売元からさまざまな特典を受けられることがあります。
例えば、特典としては以下のようなものが挙げられます。
- 限定グッズ
- 限定コミュニティ
- NFTの配布
また、特典が受け取れるということは、そのチケット自体に価値がつくことになります。二次販売して売却益を得ることも可能です。
一方、NFTは、二次販売された際のロイヤリティ収益が運営体に発生するという特徴もあります。そのため、運営体が保有者のニーズを先読みし、二次販売時のロイヤリティ発生による収益獲得を期待して、NFTチケットを発行するケースも見られるようになってきました。プロバスケットボールリーグのNBAによる、NFTチケットの利用者に対しての「チケットの半券」の発行(2022年9月時点では検討中)は、そのひとつとしてあげられます。
(3)チケットを購入する手間が減る
チケットを購入するには販売店やコンビニに行ったり、インターネットを使ったりする必要があります。
実際に出向いて購入しに行くと時間や手間がかかり、なくしてしまうリスクもあります。インターネットの場合も、偽物のチケットが届く、そもそもチケットが届かないなどのトラブルが起きると、むしろ直接出向いて購入するより時間や手間がかかることもあります。
NFTにすればインターネット1つあればいつでも購入でき、不正ができない仕組みになっているので手間や時間を省いて安全に購入できます。
3.NFTチケットの代表的事例
NFTチケットの代表的な事例は以下の3つです。
- パリ・サンジェルマンのジャパンツアー
- ジャニーズ事務所のJOHNNYS’ Experience
- ローソンチケットのLAWSON TICKET NFT
(1)パリ・サンジェルマンのジャパンツアー
メッシ選手やネイマール選手など、世界的な知名度のある選手が多数在籍しているサッカーチーム「パリ・サンジェルマン」では、川崎フロンターレ、浦和レッドダイヤモンズ、ガンバ大阪の3チームと対戦をするジャパンツアーを行う際にNFTチケットが利用されました。
NFTチケットは1000万円と100万円のVIPチケットが用意されました。
世界的なサッカーチームのチケットに実装され始めているため、今後のスポーツ業界はまずサッカーの試合での利用が主流になる可能性があるでしょう。
(2)ジャニーズ事務所のJOHNNYS’ Experience
ジャニーズ事務所は、2022年5月3日〜6月5日に開催された東京グローブ座「JOHNNYS’ Experience」公演にて、NFTチケットを販売しました。
JOHNNYS’ Experienceでもすでに利用されていますが、ジャニーズ事務所の事例はまだ実証実験の段階になります。今後も利用されるようであれば国内のチケット販売業の先駆けとなり、日本にも大きな影響を及ぼすでしょう。
(3)ローソンチケットのLAWSON TICKET NFT
LAWSON TICKET NFTは、ローソンチケットを購入した人を対象に、手元に保管できるNFTチケットを提供するサービスです。NFT化するときには、NFTチケットには、会場の座席情報など、そのとき参加したライブやコンサートの様子を、ありありと思い出せるような情報が記録されています。
「思い出を残したい」というチケット購入者の思いに純粋に応える、あまり類を見ない事例ですが、NFT活用の幅が今後も広まる可能性が感じられます。
4.NFTチケット用のプラットフォーム
NFTチケットの注目度が高まっている影響から、NFTチケットを購入・販売できる専用のプラットフォームが登場してきています。代表的なところは、次の2つです。
- TicketMe
- Hokusai Ticket
(1)TicketMe
TicketMeは簡単にNFTチケットの購入・販売ができるサービスです。NFTは仮想通貨でしか購入できないイメージがありますが、TicketMeは日本円やクレジットカードでチケットを購入できます。
また、NFTに購入するために必要な仮想通貨ウォレットも必要なく、仮想通貨やNFTへあまり触れた経験がない方でも簡単にイベントの思い出をチケットに残せます。
通常はチケットを購入する際の販売手数料が「チケット代×4.9%+ 99円」ですが、初回利用時だけ99円が無料になるため、気になる方は事前登録をしてみましょう。
(2)Hokusai Ticket
Hokusai Ticketは、TicketMeと同じく、NFTチケットの購入や販売に仮想通貨や仮想通貨ウォレットを必要としないマーケットになります。
不当なNFTチケット売買や不当な二次流通など、従来のチケット販売に見られていた問題を検知して解決することを目的としており、Hokusai Ticketを利用すると消費者は安全に購入でき、運営体は収益の増加を図れます。
対応しているブロックチェーンも、イーサリアム・ポリゴン・アバランチなど、仮想通貨業界で中心的に利用されているチェーンと対応しているため、実用性も高いと言えるでしょう。
5.NFTチケットの課題と将来性
NFTチケットはチケット業界の問題を解決できるメリットがありますが、詐欺問題を完璧に対策できない課題が残っています。
例えば、上述したようにNBAでは「チケットの半券」の発行が検討されていますが半券は試合観戦には使えません。
そのため、半券の高額販売や偽の半券などの対策はできず、チケットが別の用途を持つ場合は別で対策を考える必要があります。
今後は、ブロックチェーンを利用したNFTのセキュリティビジネスも各ジャンルで登場していくと予想されるため、期待しましょう。
6.NFTチケットは今後も需要が高くなる分野
NFTチケットは、チケット業界が抱える転売や詐欺の問題を解決できる可能性を秘めている分野です。
すでにパリ・サンジェルマンやジャニーズ事務所など、大手企業がNFTチケットを活用したビジネスを始めており、NFTチケット用のプラットフォームが生まれるほど市場規模は拡大しています。
また、最近ではチケットのNFT化ではなく、チケットとNFTをうまく組み合わせた事例もあります。例えば、HINATAでは、女性シンガーのKIMIKA氏の単独ライブ『KIMIKA 4th Anniversary LIVE ”Beautiful Tears”』のチケットを購入した人に、限定のNFTを配布しています。
こうしたビジネスの観点からも、NFTとチケットの相性は良いといえます。
いずれにしても、NFTチケットやNFTとチケットのかけ合わせは、チケット市場が健全化・活性化され、消費者・運営側双方にメリットがある、今後目が離せない分野になるでしょう。
毎日2時間以上の仮想通貨の情報を収集する仮想通貨マニアです。得た知見をもとに、実際に仮想通貨に投資中。
また、仮想通貨に関する記事を執筆するライターとしても活動しています(これまで書いてきた記事は100本以上)。
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