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【NFTと税金】利益の計算方法や確定申告の手順を税理士が解説
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2022年4月1日に、国税庁が「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」を公表し、NFT取引で利益が発生した場合は課税されることが明確にされました。
こちらを踏まえ、どのようなタイミングで課税されるのか、確定申告はどのように行えばよいのかを、暗号資産関連税務に特化した税理士が詳しく解説します。
目次
1.NFTと税金
国税庁は、2017年12月1日から2022年6月現在に至るまで、「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」のさまざまな情報を延べ7回にわたって公表しています。
そのなかで、2022年4月1日、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できる場合と限定したタックスアンサーで、「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」を公開し、初めてNFTの取引が課税対象になることを公表しました。
暗号資産は、資金決済に関する法律により「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値である」(参照:資金決済に関する法律 第一章第二条5│e-Gov法令検索)と定義され、法律上の資産性を与えられたことから、課税されることとなっています。
一方、NFTの場合、暗号資産のように法的定義はされていません。しかしながら、国税庁は、「暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できる場合」と限定した上で、課税対象であるとしたのです。
このタックスアンサーにより、NFTでも交換・売買したとき、場合によっては課税されることになり、確定申告が必要になります。
また、NFTも暗号資産取引と同様に日本に居住している人が「国外のNFT取引」をしても日本で課税されます。
2.NFT取引で課税が発生するタイミング
NFT取引で課税が発生するタイミングは、主に次の5パターンです。
- NFTを購入したとき
- 保有するNFTを売却したとき
- Gamefiで収益が発生するとき
- 製作したNFTを販売したとき
- 1~4で利用した暗号資産が値上がり、利益が確定したとき
順に詳しくご説明します。
(1)NFTを購入したとき
NFTを購入するとき、それによって生まれた利益に対して課税が発生することがあります。
そもそも、支払いをしているのに利益が発生するのはなぜでしょうか。
例えば、30万円のNFTを買うために、イーサリアム(ETH)を購入したとします。このとき1ETHあたり10万円で、実際にそのNFTを購入するためには3ETH必要だったとします。
しかし、購入前に、イーサリアムが値上がりして1ETHあたり30万円になり(このときの差額である20万円を含み益といいます)、そのNFTを3ETHではなく1ETHで購入できるようになったとします。
もし、そのタイミングで実際に30万円のNFTを購入した場合、イーサリアムを購入した人は、実質20万円の利益を得たことになります。これが購入したときに利益が発生する仕組みです。
NFTを購入したときに課税が発生するのは、この利益(確定した含み益)が20万円以上のときです。雑所得が発生したとみなされ、それに対して税金が課されます。したがって、上記の例では確定申告をし、税金を納めなければいけません。
(2)保有するNFTを売却したとき
保有するNFTを売却し、NFTの取得原価よりそのNFTの売却価額が上回った場合は、利益が出て所得が発生したとみなされ、課税されます。
このNFTの取引による所得は、取引の内容によって、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合は譲渡所得に、そうでなければ雑所得または事業所得に区分されて課税されます。
(注)譲渡所得の基因となる資産とは、一般的には書画・著作権などを言いますが、NFTは、資金決済に関する法律などにより、法律上の資産性を与えられていないことから、売却したNFTが、その対象になるか否かの慎重な判断が必要です。
しかしながら、個人がNFTを売買した場合は、譲渡所得など多くの所得区分が考えられたとしても、総じて雑所得として申告することが望ましいと考えます。
(3)Gamefiで収益が発生するとき
近年、ゲームをプレイすることでNFTや暗号資産が得られ、現実のお金を稼げるGamefi(ゲームファイ)が広まっています。
例えば、STEPN(ステップン)は、プレイヤーが暗号資産solana(ソラナ)で仮想のスニーカーを購入し、スマートフォンなどのGPSを利用して歩くことにより、暗号資産GST(Green Satoshi Token)を入手でき、レベルによって新しいスニーカーを生み出す(Mintする)ことができます。
また、The Sandboxのようにメタバース上の土地(LAND)が売買の対象になったり、Sorareのように実在する世界中のプロサッカー選手のトレーディングカードが売買され、選手の活躍に応じて暗号資産が得られたりするものもあります。
こうしたGamefiで得られた経済的利益に対しても、課税されることがあるので注意しなければいけません。具体的には次のようなケースです。
- NFTキャラクター・アイテムなどを購入する暗号資産の含み益が20万円以上あり、それが確定した場合(雑所得に区分)
- 購入したNFTキャラクター・アイテムなど取得原価より売却価額が上回った場合(NFTキャラクター・アイテムなどの内容によって、譲渡所得の基因となる財産に該当するのか、それ以外なのかを判断して、所得区分を判断する必要がある)
- 臨時・偶発的に、50万円を超えるNFTキャラクター・アイテムなどを受領した場合(一時所得に区分)
- 役務の提供により暗号資産・NFTキャラクター・アイテムなどを受領した場合(内容によって、事業所得・給与所得または雑所得に区分)
(4)製作したNFTを販売したとき
製作したNFTをOpenSeaなどで販売して収入を得たときは、取引の内容によって、譲渡所得または雑所得が課税されます。NFT特有の収入形態である二次流通での手数料を受けたときも同様です。
(5)(1)~(4)で利用した暗号資産が値上がり、利益が確定したとき
上記(1)~(4)で利用した暗号資産が、取得時よりも値上がり、暗号資産取引で利益が確定したときも雑所得が課税されます。
3.NFT取引の確定申告を行うときの大まかな流れ
繰り返しになりますが、NFT取引によって収入が発生したときは場合によっては課税が発生し、確定申告を行う必要があります。
では、申告漏れとならないようにするためには、具体的に何をすればよいのでしょうか。ここでは、NFT取引を行ってから確定申告して税金を納付するまでの大まかな流れをご紹介します。
(1)収入金額の確認
まず、1月1日から12月31日までの1年間において、NFT取引で得た収入金額が20万円以上あるか確認します。
NFT取引は、ほとんどの場合、暗号資産を介した取引となるため、暗号資産の取引も含めて損益を確認するのがポイントです。
また、無償でもらえるNFTキャラクター・アイテムのうち、日本円や暗号資産に換金しなくても50万円以上の価値を有するものの場合は、一時所得に該当するため、こちらも損益計算に含めなければいけません。
暗号資産取引・NFT取引ともに損益計算が複雑です。
国税庁のホームページには、暗号資産の所得計算のためのエクセルシートも用意されていて(参照:暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和3年12月)│国税庁)、無料で所得金額を算定できますが、「暗号資産暗号資産の国外取引所には対応していない」「NFTの損益は計算できない」などのデメリットもあります。
損益計算を自分で行うときは、Gtaxなどの暗号資産用の所得計算ソフトを利用することをおすすめします。
(2)必要経費の積算
暗号資産取引・NFT取引ともに、そこで得た収入金額から必要経費を差し引くことができます。課税額を減らすことにつながるので、きちんと積算しておきましょう。なお、必要経費には、次のようなものが該当します。
- 暗号資産の取得原価
- 暗号資産への換金の際の取引所の手数料
- NFTの取得価額
- インターネットやスマートフォンなどの回線利用料、パソコン・タブレットなどの購入費用で、暗号資産の売却やNFTの売買のために必要な支出であると認められる部分の金額
(3)利益の算定
上記(1)で計算した利益に(2)で計算した必要経費を引いても20万円以上の利益が出た場合は、納税義務が生じますので確定申告書の提出が必要になります。
(4)確定申告書類の作成と提出
確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得を、翌年の2月16日~3月15日までの間に住所地を所轄する税務署に申告し、所得税などの金額を確定させる手続きです。
申告のために用いる確定申告書は、国税庁ホームページや最寄りの税務署で入手できます。(1)~(3)までの情報を確定申告書類に記載しましょう。サラリーマンであれば、源泉徴収票、生命保険料控除証明書などもあわせて用意します。
書類の準備が終わったら、税務署へ提出です。税務署に直接提出する、郵便で送る、インターネットで申告・送付という3種類の方法があります。
補足ですが、令和3年分の確定申告書から暗号資産を売却又は使用することにより生じる利益については、雑所得の区分のうち「その他」欄に暗号資産取引を意味する数字の「2」を記入することになりました。
これは、確定申告書の一面を見れば、一目で暗号資産の所得があることが判るように変更されています。
(5)税金の納付
確定申告書を提出したら、確定申告書に記載された税額を確定申告期間の最終日である3月15日までに納付します。
その後、確定申告書に「地方税は自分で納税する」と〇を付けた人には、4月に確定申告に連動した金額の住民税が通知されるので、同封されている納付書に書かれた税額を納付します。
4.NFT取引の税金対策
NFT取引の課税に関して、なにか節税対策はないのかと気になる方もいるでしょう。ただ、個人がNFTを売買した場合、雑所得として申告することになり、その雑所得は他の所得と損益通算できないことから、対策のしようがないのが実情です。
5.NFT取引の税金に関して困ったときの相談先
税金に関して困ったときは、税理士に相談するのがひとつです。税理士については、日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」で探すことが可能です。
ただ、NFT取引は、暗号資産取引の延長線上にあるため、暗号資産に明るい税理士に相談することを強くおすすめします。
また、以下のような相談先もあります。
- 国税局電話相談センター(所轄の税務署に電話し、音声案内に従い「1」を選択、再度「1」を選択して所得税担当者に質問する)
- 税理士会の無料相談会
6.利益が出ていたら早めの対応を
NFTの売買は、Gamifiをはじめ、爆発的な勢いで拡大しています。
その一方で税務の面では、その勢いに追いついていません。国税庁は、タックスアンサーで「いわゆるNFTやFTを用いた場合の課税関係」を公表しましたが、これも暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できる場合と限定しており、公表された内容では、所得区分が複雑であるなど、誰もが簡単にNFTの税務を理解できる内容ではありません。
したがって、NFT取引で利益が出ている場合については、早めに専門家に相談するなど対応が必要です。

たまらん坂税理士法人 代表社員・税理士、一般社団法人 日本暗号資産ビジネス協会 準会員。
国税局及び税務署の各部署等に25年勤務。税務当局の実地調査から税務訴訟に至るまで国税の「攻め方」に熟知。50歳を契機に国税局を離職し、平成29年東京都国立市に「たまらん坂税理士法人」を立ち上げ、暗号資産の税務調査及び暗号資産関連税務に特化した税理士事務所運営を行っている。
著書に読売新聞関西版「暗号資産の申告漏れ相次ぐ」、日本産業新聞「仮想通貨と税、注意点は?」など。